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近代経済学 |
制度派経済学 元来、制度派経済学は、主流派経済学に対抗するアメリカの異端経済学の一潮流を指した。19世紀末から20世紀初頭にかけてヴェブレン、ミッチェルらによって創始されたもので、ドイツ歴史学派の影響を受け、方法論的個人主義を採らない。戦後はガルブレイスらに引き継がれている。 今日制度派と言われる「新制度派経済学」は、これと全く異なる流れで、基本的には主流派経済学の発展の中で出てきた潮流である。すなわち、ゲーム理論などを使って、不確実性などの制約に直面した個人が、何らかの意味で合理的選択をしたことの合成結果として制度を説明するものである。 古くは、コースが1930年代に、取引費用という概念を使って、市場取引ではない「企業」という組織が発生する根拠を説明したことに始まる。これは、「取引費用理論」と呼ばれ、その後も、ウィリアムソンらによって発展されてきた。その後、様々な賃金制度や、取引慣行、地主制度のような経済史的事実を説明する「プリンシパル・エージェント理論」、「共有地の悲劇」を防ぐ問題意識や旧ソ連圏の体制転換で明らかになった問題を解く目的で発展した「所有権理論」、日本型企業制度とアメリカ型企業制度などを共通の枠組みから発生する複数均衡として説明する青木昌彦らの「比較制度分析」などが現れ、発展してきている。 これらの諸研究では、制度というものは、他者の振る舞い方についての共通の期待を人々が抱いていて、その期待のもとで各自が自分が一番マシになるように行動すると、それが当初の共通期待を再生産するものととらえられている。その際、各自は必ずしも万能の合理性を持つ必要はなく、よりマシになる振る舞い方を他者から模倣するといった進化論的な方法でも、制度均衡が選択されることが説明されている。 (1)松尾匡『「はだかの王様」の経済学―現代人のためのマルクス再入門―』東洋経済新報社、2008年、第6章、第7章。 (松尾匡) |