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近代経済学 |
ゲーム理論 ゲーム理論とは、互いに影響し合う意思決定を扱う理論である。各自の自己目的遂行にとって互いの意思決定が影響し合う状況は、社会の様々な部面で一般的に見られるが、特にチェスや囲碁などで典型的に見られるので、それになぞらえて「ゲーム」と呼んだものである。企業経営などの必勝戦略を探る理論と思われがちであるが、実際はそうではなくて、主に、現実の秩序を、各自が互いに最善をつくしている結果ととらえて第三者的に分析するための手法である。 1944年のフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの『ゲーム理論と経済構造』出版が画期となって広まった。その後、ナッシュが1950年に、非協力ゲームの均衡概念を、“各自が互いに、相手の行動に対して最も自己が有利になる行動を取り合ってつじつまが合っている状態”として定式化した。これはナッシュ均衡と呼ばれ、その後の分析での標準的な均衡概念となった。 経済問題へのゲーム理論の応用は、当初は主に寡占企業の意思決定や労資関係、国際経済政策などの分析に見られた。例えば、寡占企業の生産量決定の最も基本的な例では、19世紀のクールノーが分析した均衡が同時手番の非協力ゲームのナッシュ均衡として、戦前のシュタッケルベルクが分析した均衡が逐次手番の非協力ゲームの均衡として説明された。この段階では、ゲーム理論の均衡が、各自の自己利益を追求する行動の合成結果という点では、従来の新古典派的な市場均衡と変わらないのに、一般には後者のように「パレート最適」(各自の境遇を他者の犠牲なしに改善することができないまでに改善しつくした状態)にはならないという意味で、改善の余地ある非効率な場合があることが着目された。 しかし、ゲーム理論の応用が本当に著しく広がったのは、1980年代以降であった。「せり」の仕組みや、取引の分析、貨幣の発生、企業組織、経済慣習、「シグナリング」等々が、ナッシュ均衡やその発展概念として説明されるようになった。今日、この流れは、経済を支える法制度や、地主制その他の経済史上の諸制度など、経済システム一般の構造分析に広がっている。その際、複数の均衡が発生するケースが認識され、そのどれが選ばれるかについての既存の文化、歴史への依存性が指摘されるようになっている。また、均衡の移動等の分析において、従来の超合理的な経済主体ではない「限定合理性」や、ゲームの構造自体が人々に共有されていない状況、人間の持つ合理的でない特定の判断をする傾向などが考慮に入れられるようになり、生物学由来の進化ゲームや、行動経済学などが取り入れられるようになっている。 (1)松尾匡『「はだかの王様」の経済学―現代人のためのマルクス再入門―』東洋経済新報社、2008年、第6章、第7章。 (松尾匡) |