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近代経済学 |
生産的労働 生産的労働とは、社会における富は流通過程から生まれるのではなく、生産過程において生まれるのであり、そして生産における労働が富の源泉であるという労働価値論を軸として、富を生み出す労働が生産的労働であるというアダム・スミスの理論を出発点としている。生産的労働に対立する概念が不生産的労働であるが、そのなかには公務労働など必ずしも社会的に不必要とはいえない労働も含まれる。しかし不生産的労働が多くなりすぎると社会における富の生産を妨げるというのがスミスの考えであった。 スミスが生産力の立場から生産的労働論を展開したのに対し、マルクスはスミスの議論を引き継ぎながらも、資本主義においては資本に雇用され、資本に剰余価値を生み出す労働こそが生産的労働であるという、生産関係重視の生産的労働論を展開した。そのため生産的労働の両側面をいかに統一して理解するかについて多くの論争が起こった。そのなかにはマルクス自身が十分展開していないサービス労働をどう位置づけるかという論争も含まれる。今日ではそうした論争のほかに、スミスやマルクスを批判し、社会的有用性という視点から生産的労働論を構築すべきであるという議論や、現代ではほとんどすべての分野において資本に雇用された労働が支配的であるから、生産的労働・不生産的労働という区別の意義は消滅しているという議論もある。 (1)アダム・スミス『国富論』。 (2)カール・マルクス『資本論』。 (3)カール・マルクス『剰余価値学説史』。 (4)阿部照男『生産的労働と不生産的労働』新評論、1987年。 (5)飯盛信男『生産的労働の理論』青木書店、1977年。 (北村洋基) |